良性発作性頭位(りょうせいほっさせい・とうい)めまい症は、誰でも起こる可能性がある「めまい」の一種です。
このめまいは、命を脅かす訳でもなく、そのままにしていれば自然と治ります。
しかし、治るまではなかなか辛い疾患。
強いめまいが出ても、焦らず対応しましょう!
今回は、 良性発作性頭位めまい症について、原因や対処法などをご紹介します。
この記事で分かること
・受診した方がいい?
・再発しないためには
良性発作性頭位めまい症って?
難しい名前に聞こえますが、区切ると分かりやすくなります。
- 良性:悪性ではない(他の部位に影響を及ぼさない)
- 発作性:症状が突然出現すること
- 頭位:頭の位置
めまいが起こる要因は「耳」からくることが多く、良性発作性頭位めまい症もそれに当てはまります。
めまいが消えなかったり悪化したり、めまいで悩まされる場合は、「耳鼻科」か「めまい外来」に行きましょう。
めまい外来は、脳や神経などの外科に設けられています。
脳の病気が原因の可能性もあるため、気になる方は脳外科の検査を受けることをおすすめします。
精密検査を希望するなら、めまい外来に行った方が、CTやMRI検査がスムーズです。
良性発作性頭位めまい症の原因
寝返りを打った・急に起き上がったなど、頭の位置が急に変わることで起こります。
運動中や事故で、頭を強く打ったときも該当します!
耳の中にある「耳石(じせき)」が剥がれ、平衡感覚を司る三半規管が刺激されるのです。
そもそも耳の奥には、回転に関わる「三半規管」と、体の平衡感覚や重力を正しく制御する「耳石器」が存在します。
耳石器には、耳石というカルシウムでできた石のようなものがあり、それが剥がれると近くの三半規管に入ることも…。
耳石が入ったことで、頭を動かすたびに回転器官の三半規管を刺激し、強いめまいを感じる仕組みです。
耳石はとても小さいので、症状が出現していなくても、剥がれたものが集まって塊になると別ですね。
起こりやすい人は?
加齢の他に、女性ホルモンも関与していると考えられています。
そのため、一番起こりやすい年齢層は60~70代の女性。
また、耳石を構成しているカルシウムの代謝が低下する、「骨粗しょう症」とも関係しています。
耳石が剥がれやすくなり、再発するリスクが高まります。
でも、「私はまだ大丈夫」と思わないことです!
良性発作性頭位めまい症は、15歳以下でも症例があり、20~30代でも多く報告されています。
デスクワークの人も要注意
頭の位置がほとんど変わらない人も、良性発作性頭位めまい症になりやすいです。
パソコン仕事の方、長時間のスマホやゲームをする方に多いので、注意が必要です。
また、いつも同じ姿勢で眠っていたり、枕が低かったりするのも要因になります。
枕が低いと耳石が三半規管に入り込みやすくなるため、枕は高くしましょう。
だからといって、合わない高さだと首を傷め、睡眠の質を下げてしまいます。
再発を防ぐため、オーダーメイドにする人も少なくありません!
どんな症状?
立つ・座るなどして「頭を起こしている状態」だと、景色がグルグル回ります。
乗り物酔いに似た感覚で、めまいが強いと、吐き気や嘔吐を伴います。
これは前述でご説明した通り、頭の位置が変わることで、三半規管に入り込んだ耳石が動くためです。
10~20秒くらい横になっていれば、『ある程度めまいは落ち着く』という特徴があります。
そのため「治った!」と思ってしまうのですが、頭を動かすと再びめまいに襲われるため、しばらく身動きがとれません。
しかも、症状は人それぞれなので、寝ていてもめまいで不快感が続く場合も…。
めまいが一日中続く可能性
剥がれた耳石がリンパ液の中で浮遊していれば、割とすぐ落ち着きます。
ただ、問題は「クプラ」と呼ばれる器官に貼りついたときです。
このクプラが回転を感じ取っている部分なので、耳石の影響を受けてずっとめまいが続きます。
「メニエール病」との違い
めまいで疑われる疾患として挙がるのが、メニエール病。
これは、耳石の剥がれではなく、内耳にリンパ液が溜まって水ぶくれになることが原因です。
リンパ液が増えるのは、「聞く」部分と「平衡感覚」の部分と、どちらに現れるかで症状が異ります。
聞く部分であればめまいは生じませんが、平衡感覚の部分に水ぶくれができると、グルグルまたはフワフワしためまいが出現するのです。
グルグルしためまいは、良性発作性頭位めまい症と似ています!
ただ、良性発作性頭位めまい症には、難聴や耳鳴りなどの「聴覚障害」は起こりません。
そこがメニエール病との大きな違いで、きちんとした診断基準により判断されます。
治るまでにどのくらいかかる?
剥がれた耳石は再吸収されるため、2~3週間で溶けてなくなります。
めまいに悩まされるのも、大体そのくらいかかると考えていいでしょう。
めまいがひどい・今すぐどうにかしたいなら、病院に行って点滴を打ってもらう方法もあります。
「打ったから治る」という訳ではありませんが、症状を和らげることができます。
点滴を打った翌日、日常生活を問題なくこなせるようになる人もおり、個人差が出ますね。
自然治癒にしても、1日安静にしたから治るのではなく、徐々にめまいが落ち着いてくるという感じです。
辛ければ救急車を呼ぶ
めまいが強く出てしまったのに、ひとりで対処しなくてはいけないときが大変です。
トイレや食事が困難で、ずっと寝ていても症状に変化がなければ、救急車を呼んでください。
良性発作性頭位めまい症で、救急車を利用する人もいますよ!
「このまま我慢すれば…」「救急車って大げさ…」など思わず、体を第一に判断しましょう。
めまいが起きたら?【寝返り体操】
「もしかしたら良性発作性頭位めまい症かも?」と思ったら、寝返り体操が効果的です。
この体操をすることで、ズレた耳石の場所を変える、つまり三半規管から耳石を外に出すことを促せます。
どちらの耳か知る方法
まず、どちらの耳に異常があるのか調べるところから始めます。
頭を動かすので、めまいが強いほど辛くなりますが、無理しない範囲でチャレンジしてみてください。
寝返り体操のやり方
良性発作性頭位めまい症の治療として、エプリー法(エプレイ法)という、「耳石の位置を戻す」方法があります。
ここでは、右耳に異常があった場合の手順をご紹介しますね。
準備するものは枕で、肩甲骨の下に来るよう置きます。
5の工程までを1セットとして、2~3回繰り返します。
めまいで本当にキツイんですが、症状を和らげるために頑張りましょう…!
左耳に異常があるときは、この手順を左右反転させてください。
首や腰を痛めている場合、無理な動きは禁物です。
良性発作性頭位めまい症を予防するには
命に関わらないとはいえ、なるべく起こしたくない良性発作性頭位めまい症。
なんと、再発しやすい疾患なのです。
1年以内の再発が約20%、5年以内だと約半数が再発しています。
では、再発を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?
就寝時
低い枕ではなく、高い枕を使うのがポイントです。
また、寝返りを打ちやすいよう掛布団を軽くしたり、ベッドをワンサイズアップさせたりすると◎。
就寝前にやりがちな、スマホ操作は布団に入ったらやめるか、制限時間を決めましょう。
長い時間、同じ姿勢になることを防ぐことが大切です。
カルシウムの摂取
耳石はカルシウムで構成されているため、正常な代謝として積極的なカルシウム摂取がおすすめです。
1日500㎎以上の摂取が望ましいとされています。
一番摂りやすいのは牛乳(コップ1杯:220㎎)ですが、お腹を下してしまう方もいらっしゃるでしょう。
以下の食べ物にも多く含まれていますので、ご参考になさってくださいね。
- 納豆(1パック):45㎎
- 木綿豆腐(150g):129㎎
- 小松菜(1/4束):162㎎
- ひじき(10g):100㎎
- ししゃも(3尾):198㎎
- 干しエビ(10g):710㎎
もっと手軽に管理したい方は、サプリメントが向いていますよ!
ビタミンDも含まれているタイプにすれば、カルシウムの吸収を促進してくれます。
ストレスを溜めない
ストレスを感じると、「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌されます。
すると血管が収縮し、血流が悪くなる…。
血流が悪くなれば、カルシウム代謝もうまくいかなくなります。
そんな健康を害するホルモンを抑えるには、ストレスを抱えないこと・うまく発散させる場を作ることです。
▼急な怒りの対処をまとめた記事はこちら
ストレス解消で「適度な運動」がよく出てきますが、有酸素運動にはストレスを和らげる効果があります。
さらに継続することで、体も心もストレスに強くなるんです!
「運動は疲れる」これこそ、体のオンオフを切り替えるスイッチに。
疲れのおかげで、睡眠の質も上げることができるのです。
良性発作性頭位めまい症のまとめ
なかなか聞きなれないですが、年齢や仕事の影響で、誰にでも起こる可能性がある疾患。
まだなったことが無い人も、知っているのとそうでないのとでは、気持ちの面でゆとりができます。
もし急なめまいを感じて不安なときは、ストレスも溜まってしまうので、時間を置かず受診してくださいね。