雨上がりの小さな水たまり、子供はとってもはしゃぎますよね。
特に、海や川は、広い場所で自然に触れることもできますし、行楽シーズンに人気の場所です。
しかし、親にとっては心配な一面もある場所でもあります。
ケガをしたり溺れたり、最悪の場合、死亡するケースがあるからです。
水難事故の件数や原因を知り、子供の水難事故を防ぎましょう。
この記事では、実際に起きた時の対策をご紹介します。
この記事を読んでわかること
・事故に合わない対策や、道具を知りたい。
・おぼれている人を助けるには、どうする?
水難事故は毎年発生している
水難事故のデータを確認すると、令和2年度では水難者は1,547人となっています。
そのうち、中学生以下の子供(全国)の発生件数は176人で、亡くなった方・行方不明者が28人です。
子供が亡くなったり、行方が分からなくなったりする場所で、一番多いのは「海」。
次に「河川」、続いて「用水路」となっていて、主な原因は「水遊び」です。
特に夏場は、レジャーで利用する人も増えるため、水難事故が起きやすいです。
突然起き、周りに人がいても気が付きにくいので、ある程度は”自分で身を守る方法”を知っておくのが理想です。
水難事故が起きる原因
先ほど、水難事故は「水遊び」が原因とお伝えしましたが、もう少し掘り下げてみます。
思いもしないことが起きた時、人はどういう気持ち・状況になるのでしょうか。
ここでは、海や川で”自分が事故に合ったとき”の場合をご紹介します。
1.パニックになりやすい
溺れたと分かった瞬間、脳は命の危機を感じるので、とっさに体が動くのは「防衛本能(ぼうえいほんのう)」とも言えます。
しかし同時に、頭がパニック状態になるのです。
「水面に上がろう・岸まで泳ごう」と思っても、焦りの気持ちが大きくてうまくいきません。
さらに、水をたくさん飲んでしまうので、助けを呼ぶ声さえが出なくなります。
こうなると、残念ながら悪循環でしかありません。
もがいているうちに、体力がなくなり、救助隊が駆けつけるまでに沈んでしまっているケースが多いです。
2.流れが速い
プールよりも自然系の水難事故が多いのは、海や川に「流れ」があるからです。
例えば、水の勢いと深さがあまりない場所でも、足にかかる水圧を感じると思います。
この水圧は、私たちの体を押し流してきます。
そして、足元をすくわれると、あっという間に深い位置まで連れていかれるのです。
どんどん流されて、見失ってしまうことも。
”ひざ下なら、流れに逆らえる”と聞いたことがあるかもしれませんが、それは地面が平(たいら)だった場合です。
地面が砂利などで安定していない・滑りやすい場所では、関係ないと思っていいでしょう。
3.自分は溺れないと思い込んでいる
「私は泳げるから平気」「楽しいから大丈夫だろう」などの、思い込みや油断…。
それが水難事故を増やしている一因、と言ってもいいかもしれません。
”遊泳(ゆうえい)禁止”などのエリアでさえ、入ってしまう人がいます。
注意喚起の看板がある場所は、過去に実際に事故が起きており、それを防ぐ意味で立てられています。
もし泳げたとしても、足元が悪ければ岸に上がれませんし、ずっと水の中に居ると体力がなくなってきます。
水難事故を防ぐには?そのポイント
水難事故のリスクは下げるには、できるだけ行動を共にすることが大切です。
しかし、子供は好奇心旺盛で活発なので、片時も目を離さないというのは、難しいときがあるでしょう。
子供が溺れてから~救急隊が到着するまでに、「顔を出して浮いている」ことが生死を分けます。
つまり、本人がどれだけ危機感を持てるか、溺れた時の行動にかかっている所もあるので、しっかり話し合っておきます。
1.遊泳禁止のエリアに立ち入らない
先ほどもお伝えしましたが、事故に合わないように、危険がある場所には絶対に近づかないでくださいね!
また、上の画像のように、「人の目が届かない場所」だから禁止されていることもあります。
水の中に入ってしまうと、できるだけ早い助けが必要です。
このような看板が立っていたら、そこで泳ぐのはやめましょう。
2.大雨や強風などの悪天候による水位上昇と波の高さ
これは海に当てはまることですが、よく晴れて風も少ない穏やかな天気なら、海も穏やかなことが多いです。
しかし、天気が悪くなった時は、ガラッと変わるのが海の怖いところ。
水位が上がって波も高くなり、泳いでも勝手に体が流されてしまいます。
特に、「離岸流(りがんりゅう)」に合うと危険です。
離岸流とは、”海岸へ打ち寄せた波が、沖へ戻ろうとする現象”で、大雨や強風で強さを増します。
離岸流の起きやすい場所は、近くに人が作った建造物がある・波が直角に海岸へ入る場所などです。
そのため、離岸流のチェックと、天気が悪くなったらすぐに岸へ上がるようにしましょう。
3.水深や水流などの危険個所
海の離岸流もそうですが、川にも危険な場所があります。
川は、少し進んだだけでも、流れや深さが違います。
浅いからと思っていても、流れが早かったら足を取られてしまうのです。
以下のような場所も、注意が必要です。
- 底が見えないほど、水深が深い。
- 下流などの水の渦があるところは、巻き込まれて出にくくなる。
- 土砂が溜まってできた中州(陸地)は、水かさが増えると戻れなくなる。
また、川が濁ってきたら、上流で洪水が起きているサインの可能性があるので、すぐに離れてください。
4.「大丈夫」だと思わない
油断や過信は、事故を招きやすくなります。
子供に「水遊びにも危険がある」ことを、しっかり伝えておきましょう。
言ったときは分かったと返事をしても、すぐに遊びに夢中になることも少なくないので、親側も「大丈夫」とは思わず、見守れる範囲で遊ぶようにすると良いですね。
海なら、ライフセーバーや救護所が近い場所を選ぶのも、ポイントのひとつです。
5.サンダルは足に固定できるタイプを
靴は水に沈まないため、体を浮きやすくする助けになります。
つま先に引っかけるだけのタイプや、スリッパタイプのビーチサンダルは、脱げやすいのです。
マジックテープやボタンなどの留め具が付いていて、足首に固定できるタイプをおすすめします。
足の怪我を防げるメリットもあります。
以外にも、洋服も浮力があるので、正しい対策をすれば「浮くための道具」として役立ちます。
6.水に流された、または落とした物を追わない
水難事故に合った人の中には、「持ち物が流されて取りに行こうとした」というケースもあります。
帽子や靴は軽いため、あっという間に流されてしまうもの。
取りに行くと、水の深みにはまる・戻る体力を無くすかもしれませんので、この時だけは諦めてください。
「物を大切に」と教える親御さんもいらっしゃるかもしれませんが、この場合は例外です。
7.ライフジャケットを着る
水遊びのライフジャケット、これは絶対に着ておいた方がいいです!
見失わず、どこにいるか確認できる(※)・息ができるという条件がそろっていれば、助かる確率がかなり上がるからです。
※赤や黄色など、ライフジャケットが目立つ色をしているのは、水難者を見失いにくい(見つけやすい)という意味があります。
機会の少ない川遊びですが、命を守るために家族分用意しましょう。
中には、操作すると浮き輪が出てくる”腕輪タイプ”も、サーファー向けに販売しています。
コンパクトさが魅力ですが、子供が操作するのは難しいと思います。
それに、正しく操作しても、不良品だとうまく浮き輪がでてこないことがあるそうです。
身に着けるだけのライフジャケットが、一番簡単でおすすめです。
自分が水難事故に合ったときの対策法
自分が水難事故に合ったら、まず「呼吸ができる状況」を作ります。
人は水に入った時、体の2%しか水面から出ません(息を吸った場合)。
イメージしやすい縦(たて)浮きだと、頭のてっぺんしか水面か出ないため、息ができません。
安全な浮き方は、以下の方法でできる背浮きです。
背浮きなら顔が水面から出るので、息をしながら待つことができます!
ここで声を出すと、肺の空気が抜けるので体が沈んでしまいます。
背浮きになったら、できるだけ助けは呼ばないようにしましょう。
お伝えした通り、靴があれば足側の浮力にもなります。
⚠背浮きの練習は海や川で行わず、付き添いのできるプールで行ってください。
頭は「上流」に向ける
背浮きのやり方で、”両手で水をかきながら”とお伝えしたのは、岸に上がるためではなく頭を守るため。
川の場合、岩などに頭をぶつけたことで、怪我をしたり意識がなくなったりする危険があります。
そうならないよう、頭は上流に向けておく必要があるのです。
水難事故を見たらどうする?
次は、子供が水難事故に合ってしまった場合の対策法です。
子供が背浮きを知っていれば、「背浮き!背浮きして!」と何度も呼び掛けてください。
パニックになる人がほとんどなので、やはり背浮きは知っていた方がいいですね。
落ち着けば、体力も減りにくくなります。
では、具体的にどうしたらいいかをご説明します。
1.自分が水中に入って救助するのはダメ
子供が水難事故にあったら、助けたいという気持ちで、すぐに水に飛び込む大人はたくさんいます。
しかし、絶対に飛び込まないでください。
自然の力はとても大きく、助けようとした大人も、水難事故に合うケースが多いのです。
実際のところ、”助けに行った4割の人は、自分も溺れてしまう”という、2次災害のデータもあります。
また、ため池のように、岸に上がる場所が「緩やかな坂」になっていると、足が滑ってしまいます。
そこでは、自分の力だけでは絶対に岸に上がれません。
どんな場所でもひとりでは水に入らず、サポートをしましょう。
2.119に通報
溺れていると分かったら、様子を見ることはせず、すぐに119に通報します。
また、海で遭難なら、海上自衛隊の118でもOKです。
ここでのポイントは、水難場所の住所を聞かれるので、すぐに答えられるようにしておくこと。
今はスマホで簡単に調べることができますが、最初から知っているのと、通報中に調べるのとでは、時間の経ち方が全く違います。
大人もパニックになり、うまく調べられないかもしれないので、出かける前に調べておきましょう。
3.子供(水難者)を見失わない
救助をスムーズにするため、子供から目を離さないでください。
電話に気を取られて見失うと、水難者を探すところから始まるので、時間がかかります。
近くに人が居れば協力を頼み、「電話する人」と「見守りをする人」などに分けましょう。
サポート側の人が多いほど、仕事を分担できるので、子供が助かる可能性が上がります。
4.浮くものを体のそばへ投げる
空のペットボトルがあれば、水難者の近くへ投げて、浮く助けにしましょう。
ヒモのようなものがあれば、ペットボトルに結んでおきます。
そうすることで、もし子供が掴めなかったときに、投げ直すことができるからです。
投げる前に「投げるもの」と「投げるタイミング」について、子供に声をかけてから投げてください。
- 空のペットボトルに少しだけ水を入れ(水を入れると投げやすくなる)、ヒモがあれば結ぶ。
- 「今からペットボトルを投げるから、掴んでね!」と声をかける。
- 振り子のように下から振って、水難者に投げる。
子供が掴めたら、背浮きのままお腹へ持っていき、両手で持つようにしましょう。
いくら浮くものとはいえ、体を縦にできるほどの浮力はありませんので、背浮きが基本姿勢です。
5.ロープ(代用でも可)を投げる
ロープは、水難救助にとても役に立つ道具です。
離さないようにしっかり持ち、長さがあれば、木などの固定できるものに繋いでおきます。
また、「レスキューロープ」という専用のロープもあり、太さは約1㎝、長さは約30mです。
それほど場所も取らず、使いやすいので車に積んでおくことをおすすめします。
一方デメリットもあり、レスキューロープは使用期限があるため、そのチェックもお忘れなく!
ロープの代わりになるもの
ロープが無ければ、身近なもので「ロープ代わり」にできるものがあります。
- 上着、ズボン、ベルトなどの衣類を縛って、3~4mくらいの長さにする。
- 人が多ければ、何人かでヒューマンチェーン(前後交互の向きになって、手首をつかむ)を作る。
ヒューマンチェーンは、足がつくところであること・流れが速すぎない場所でしか使えません。
6.励まし続ける
不安な気持ちを和らげるのと、パニックにならないように、声をかけ続けます。
ただ、水面から上の音は、流れにかき消されてしまうため、とても小さくなります。
怒鳴っているくらいの大声を出しましょう。
そして、最初にお伝えした「背浮きして!」の声かけの他に、「大丈夫!頑張れ!今から助けに行く!」と励ましてください。
陸に上がった後の対策法
陸に上がったら、体をタオルで拭いて、毛布があれば包んで体温を下げないようにしましょう。
また、以下のことを確認します。
- ケガをしていないか。
- 水を飲んでいないか。
大きなケガもなく本人が元気そうでも、必ず病院には行ってくださいね。
体温が下がっていたり、水を飲んでいる可能性があるため、診察を受ける必要があります。
ケガの手当て
怪我をしていたら、応急処置をします。
応急処置のポイントは、「①止血する」「②細菌の感染を防ぐ」「③痛みを和らげる」の3つです。
応急処置に使う道具は、以下のもの(一部)です。
- ガーゼ
- 包帯(使いやすいのは4号か6号)
- 三角巾
- 清潔なタオル
- ばんそうこう
- 体温計
- 消毒液
- はさみとピンセット
- ビニール手袋(感染予防)
- 安全ピン など
応急処置に必要な物は、ひとつずつそろえてもいいですが、メディカルセット(救急箱)などの「セット売り」している商品が便利ですよ。
子供の水難事故のまとめ
子供の水難事故について、原因や対策法をご紹介しました。
水難事故の発生件数では、数年前から横ばいで、あまり変わっていないようです。
背浮きは効果的な方法ですが、溺れるリスクを下げるまでにすぎません。
一番大切なのは、危険性が高い場所に立ち入らず、自身の安全を確保することです。
水辺での気を付け方を、子供のうちからしっかり対策しておきましょう。