客室清掃は体力仕事のため、体調を崩してしまう方がいらっしゃいます。
肩や腰を痛めるケースが多く、私の場合は”腰椎(ようつい)椎間板(ついかんばん)ヘルニア”になってしまいました。
今回は腰のヘルニアについて、原因や療養の流れ、再発予防で気を付けていることなどをご紹介します。
腰椎椎間板ヘルニアになったら、客室清掃を辞めるしかないのでしょうか?
この記事がおすすめの人
・対処法を分かっておきたい。
・ヘルニアの悪化や再発を防ぎたい。
腰椎椎間板ヘルニアとは?
ヘルニアとは、背骨の「椎間板(ついかんばん)」から出た骨髄(こつずい)が、神経を圧迫する病気です。
聞きなれない言葉が多いので、ひとつずつご説明しますね。
まず背骨とは、脊椎(せきつい)という骨が、いくつも重なって構成されているものです。
その骨と骨が直接ぶつかると痛いので、クッションとして間に存在しているのが”椎間板(ついかんばん)”。
椎間板は水分量が多く、力が加わると変形します。
このおかげで、負担を和らげたり体をスムーズに動かしたりできるんです。
そして脊椎の中でも、腰のあたりにある椎間板は”腰椎(ようつい)”に分類され、これが病名の由来になっています。
さて、水分が豊富な椎間板ですが、負荷が継続的にかかったり老化が進行したりすると、徐々に水分を失っていきます。
すると椎間板はクッション性を失い、硬くなってしまうんです。
そこに変わらず負担が加わり続ければ…いずれ椎間板の中にある骨髄(こつずい)が飛び出してきます。
それが近くにある神経を圧迫し、足腰の痛み・痺れとなって現れます。
神経は体に起きた刺激を伝達するので、飛び出した骨髄を感知して、サインを出しているという訳です。
腰椎椎間板ヘルニアの原因
意外にも、腰椎椎間板ヘルニアの好発年齢は20~40代とされています。
そして、男性の発症率は女性の約2倍です。
思い当たるものがないか、以下の項目をチェックしてみましょう。
- 猫背。
- 太り気味。
- 運動不足。
- 体が硬い。
- 足を組むクセがある。
- 重い物を持つことが多い。
- 仕事柄、座ったままの時間が長い。
- 腰をひねる(力をかける)スポーツをする。
- 力仕事でよく前かがみ(腰を曲げる)になる。
男性の発症率が高いのは、力仕事での負担が大きくなりやすいからです。
一方、座る姿勢が長くなる要因は、デスクワークや車の運転。
座っていると楽に感じますが、これは「立ったまま腰を曲げる動作」と同じくらい腰に大きな負担がかかっています。
足を組むと骨盤が歪み、猫背やO脚など姿勢が悪いのも原因です!
それに、筋肉量が少なくて体が硬いと、本来使うはずの力が使われず、力の分散ができなくなります。
力が集中しやすいのは腰もそうですが、肩・膝も同様であり、痛めやすい部位なのです。
ヘルニア診断までの症状と行動
ここでは、私が腰椎椎間板ヘルニアと分かるまでの経緯をご紹介します。
早く対応すればここまで悪くならなかったので、参考になれば幸いです。
座っていると腰に違和感
現在は客室清掃員ですが、前職はデスクワークでした。
座っている時間が長くなると、お尻のすぐ上あたり(左側)が痛むようになってきたんです。
これも腰椎椎間板ヘルニアの特徴で、最初は腰に出ます。
それから半年後、客室清掃員として働くようになり、腰痛が増してきます。
「骨盤が歪んでいるのかも?」と思い、接骨院(※)へ。
※接骨院(整骨院)は、柔道整復師の国家資格を持つ人が、ケガ含め治療目的で施術します。
混同しやすい整体院やカイロプラクティックとは、”資格が無くても開業できる”という違いがあります!
骨盤矯正しても変わらず
先生にみてもらうと、確かに骨盤が少しズレているとのことで、数か月かけて治療してもらいました。
+保険適用でマッサージと電気治療もやっていたのですが、柔軟性の無さを実感。
筋力(運動)不足も指摘され、思い当たることだったのですんなり納得してます。
首も肩も凝っていて、「全身は”筋膜”で繋がっているから、一か所ダメになると、それを補おうとして痛みが広がる。」と教えてもらいました。
自宅でできるストレッチも教えてもらい、できる範囲でやっていました。
力を入れると足に痺れ
客室清掃中、ビリっ!と膝下からつま先にかけて電気が走る感覚が…。
痺れは初めてだったので、悪化してるんだと思いすぐ病院へ行きました。
レントゲンにてヘルニアの疑い有(※)とのことで、後日のMRI検査で確定しました。
※レントゲンに椎間板は写らないため、背骨同士の間隔や、椎間板の色・厚さの微妙な違いで医師は推測します。
日が経つにつれ激痛に変わり、左足の太もも~ふくらはぎ、くるぶしへと痛みが下りてきました。
これも、腰椎椎間板ヘルニア特有の症状です。
職場を休むタイミング
「仕事が休みづらくて言いづらい…」という人は多いです。
でもそれは、都合の悪いことの先延ばしになります。
ギリギリまで我慢より、違和感の時点で職場に相談しましょう。
無理が一番良くありません。
仕事どころか、日常生活に悪い影響を及ぼすからです。
ヘルニアで困るのが、痛みと痺れ以外に「力が入りづらくなる」症状もあります。
歩いたり着替えたりもそうですし、排尿まで影響します!
治るまで時間がかかる病気なので、長期休みを取るために「休職届」を提出しましょう。
私は約2か月間お休みをもらい、復帰したばかりは、出勤日数や担当部屋をセーブしてもらいました。
傷病手当金がもらえるか確認
傷病手当金とは、仕事以外の理由による怪我などで休職することになり、その間給料が出ない場合に支給されるもの。
一方、仕事中の業務で怪我をした時は「労災」となるので、間違わないようご注意ください。
傷病手当金は申請しないともらえないので、もらいそびれる人が少なくありません。
正社員ではなく、パートとという位置づけが貰い忘れやすい原因のひとつのようです。
福利厚生が関わってきますので、まずは会社に相談を。
傷病手当金で分からないことがあれば、健康保険事業の運営者(保険者名称に記載)に問い合わせましょう。
申請書類の「休職する理由」には、”私傷病の悪化”などと書く。仕事の業務を根拠にしない。
保育園利用中なら必要書類の提出を
小さなお子さんを保育園に預けている場合、必要な手続きがあります。
まず保育園とは、事情により保育できない保護者向けの施設です。
ほとんどの家庭が「共働き」という理由から、市役所に就労証明書を提出していますね。
しかし仕事に行かなくなると、条件によっては就労していないとみなされ、利用の対象外になってしまいます。
市役所に事情を報告
利用停止にならぬよう、長期休暇が決まったら市役所に書類提出しましょう。
今回は”療養”なので、きちんと申請すれば利用可能ですよ。
一部の申請方法がこちらです。
- 就労証明書を出し直してもらい、備考欄に休職期間と病名を記載してもらう。
- 会社に提出した休職願を、市役所に持っていく。
- 医師の診断者を持って行く。
医師の診断書は、受け取るまでに2週間~1ヶ月かかりますので、提出日から逆算して早めに行動するのがポイント。
焦らなくても、ある程度の猶予(3か月くらい)があり、その期間内に提出すれば問題ありません。
自治体によって必要書類・提出期限が異なりますので、まず電話で確認した方がスムーズです。
園にも報告
園に預けていると、子供の急な体調変化で「お迎えをお願いします」と連絡が入る時があります。
職場に連絡が行かないよう、いつから休職なのか連絡しておいてくださいね。
職場・園の混乱を防げますし、お迎えまでの時差も少なくなります。
復職が決まれば、復帰日・曜日(シフト)・時間帯を連絡しましょう!
ヘルニアの急性期で気をつけたこと
腰椎椎間板ヘルニアの急性期は、2週間くらい続きます。
お尻~足まで痛みが下りてくるので、歩行が困難になる特徴も。
立っても寝ても痛い…どんな姿勢でも激痛で、痛みとの戦いです。
そんな時の抑えるポイントはこちら。
冷湿布でもいいですが、より冷やす効果がある氷枕や保冷剤がおすすめです。
冷やしすぎると凍傷のリスクがあるので、タオルで直接肌に触れさせない・当てる位置をこまめに変えてください。
医療用なら、用途がピッタリで使い勝手もいいです。
前屈は腰に負担をかけるので、背筋は伸ばし、膝を広げたまま腰を下げるイメージで。
正座も、腰に負担が少ない姿勢です。
しかし、血流が悪くなったり膝を痛めやすいデメリットがあるため、座布団を使って負担を和らげましょう。
コルセットは痛みがあるときだけ使う
腰のヘルニアと、コルセットの相性はどうなんでしょうか?
コルセットが持つ、4つの効果がこちらです。
- 姿勢を正す。
- 痛みを和らげる。
- 動く範囲を制限する。
- 固定して安静にさせる。
この他に、「つけていると安心する」というメンタル面でメリットがあります。
ただ、腰椎椎間板ヘルニアの場合は、急性期などの「痛みを感じているときだけに使う」ことが勧められています。
なぜなら、コルセットの効果の1つである”動く範囲を制限する”ことは、筋力の低下に繋がるからです。
位置がズレてくる・汗をかいて蒸れるデメリットもありますよね…!
コルセットに頼り過ぎず、痛みが落ち着いてきたら根本の解決法を取り入れましょう。
▼客室清掃員のサポーターの必要性はこちら。
ヘルニアに後遺症はある?
後遺症は人それぞれで、必ずこうなるというものはありません。
私の場合をお伝えすると、痛みが引いてもしびれは続きました。
それと、左側(腰を痛めた側)の足の感覚が鈍いです。
太もも辺りをもんだ時、右足に比べるとわずかですがマヒしている感覚ですね。
これは、ヘルニアで神経が圧迫されることで、その神経に関する筋肉に影響が及ぶため。
感覚障害や可動域の制限があるようです。
腰椎椎間板ヘルニアの悪化・再発予防法
腰椎椎間板ヘルニアは、2~3か月くらいで痛みは消失するケースが多いです。
痛みが和らぎ回復期になれば、歩行などの日常動作が行えるようになります。
【ストレッチ】使った筋肉を伸ばす
仕事中は腰に大きな負担がかかり続けるので、適度に休憩を取るのも◎。
体をほぐすには、自宅でのストレッチが効果的です。
ストレッチは何度行っても構わないものなので、ぜひやってみてください。
▼客室清掃員におすすめのストレッチはこちら。
体が軽くなるような、スッキリした気持ちになりますよ。
無理に伸ばし過ぎると痛めるので、力加減にはご注意を。
正しい姿勢を意識
イスに座る時は深く腰掛け、背もたれに密着させましょう。
背もたれを使うことで、上半身の重さを分散できます。
つい気が緩んでしまう人は、イスに置くだけで姿勢を正してくれるグッズがおすすめ。
イスに浅く座ると、腰の負担が大きくなるので要注意です。
猫背になりやすい人は、背筋を伸ばす意識を。
また、物を持ち上げるときは、できるだけ体に引き寄せてから持ち上げます。
その時も腰は曲げず、膝を曲げてしゃがんでくださいね。
理想は、ワゴンなどの”運べるツール”を使うことです!
【体幹強化】筋トレを行う
筋トレはダイエットにもなりますし、体のバランスを整えて疲れにくい体を作ってくれるのです。
腰椎椎間板ヘルニアなら、背筋や腹筋を中心に体幹を鍛えましょう。
有名なのはプランクですが、慣れないと大変なので以下の動画をご参考になさってください。
腹筋をするときは、体を起こす必要はありません。
お腹に力を入れながら、おへそを見るように頭を起こすくらいでOK。
鼻から吸って口から吐くという呼吸法で、どこを鍛えたいか意識しながら力を入れるのがポイントです。
年相応の動きで
生活習慣に気を付けても、加齢で起こる変化があります。
疲れやすくなり、筋力・体力・持久力・柔軟性などが低下。
動けるうちに鍛えないと、急激な筋力減少に対応しきれません。
そうすると、精神と体の動きを一致させるのが難しくなるのです。
慣れていた動きのはずなのに、痛みを加速させる原因に…。
精一杯ではなく、余力を残すのが◎。
気持ちを若く保つのは大切ですが、体に無理をさせてはいけません。
▼ヘルニア対策で仕事中気を付けていることはこちら。
まとめ:筋力と柔軟性を高めてヘルニア予防
腰椎椎間板ヘルニアになっても、80%の方が手術不要とされる病気です。
痛みが強いので大変でしたが、筋力が落ちている・柔軟性が足りなかったと知るキッカケになりました。
仕事の合間や日常で対策はできるので、体が元気なうちから予防しましょう。